2019年も1ヶ月が経ち冬アニメも4話ほど放送されました。
皆さんは今季はどのようなアニメをご覧になっているでしょうか。

毎クール数十本のアニメが作られ消費されていく昨今、旧作アニメを振り返ることもすくなってきました。そんな大量生産大量消費時代においても何度も振り返って鑑賞したくなるアニメも少なからず存在するものです。

今回はあえて一年前に放送されていたアニメを振り返り味わい尽くしてみようと思います。
(記事の性質上、ネタバレを大量に含みますのでご了承ください)
 今回味わうアニメのタイトルは「宇宙よりも遠い場所」通称「よりもい」です。
マッドハウス制作のオリジナルテレビアニメで2018年1月から13話放送されました。

 何かを始めようとするもいつも尻込みしてしまう引っ込み思案な少女キマリが周りの目を気にすることもなく一心不乱に南極を目指す少女報瀬と出会う事から始まる青春ロードムービーの傑作です。

 四人の少女が互いに助け合いながら旅をして、自分の心と向き合い問題を解決していくという形は「オズの魔法使い」の時代から幾度となく使われてきたテンプレ展開でありながら台詞回し、演出、音楽ともに現代人の心に突き刺さりまくり、ニューヨーク・タイムズの選ぶ「最も優れたテレビ番組」の海外部門10作品に選ばれるまでの評価を受けました。

 私も、リアルタイムで見ていた初見時から春クールの再放送、アマゾンプライムでの繰り返し視聴と何度も見返してはその度に目頭を熱くさせています。ただその魅力については去年一年はあまりに熱狂しすぎていたため冷静に考えることができていませんでした。
1年経ったこの時期に「よりもい」を語ろうと思ったのはようやく作品を客観的に見ることができるようになったためです。

第1回の今回は作品の魅力を大雑把にまとめていこうと思います。


《よりもいの魅力① セリフ回しと声優の演技力》

 アニメに限らず小説、ドラマ、舞台劇、映画などを私が途中で飽きてしまう要因のひとつにセリフのダサさがあります。わざとらしかったりくどすぎたりする表現、長すぎる説明ゼリフ、キャラクターの年齢設定からかけ離れた幼稚な掛け合いなどは本当にげんなりしてしまうのですが、それが「よりもい」には少なかったなという印象です。セリフにクセがなく心情がすんなり入ってくるというのは本作のような心の動きに重きを置くドラマ作りではとても大切だなと思い知らされました。

 それを演じている声優さんの演技力もとても良かったですね。シリアスパートでもコメディパートでも演技力の高さが光っていました。私はあまり声優さんについては詳しくないので後に調べてわかったことですが、脇を固めるキャラですら普段はメインを張るような声優さんがキャスティングされていたようですね。しっかりとした脚本をしっかりとした声優が演じればオリジナルアニメでもしっかり面白くなるというあたりまえのことが示された例として「よりもい」は似たようなジャンルの模範となるアニメだと言えると思います。


《よりもいの魅力② なんとなく知ってる感覚》

 よく創作に対して「感情移入できる」かどうかというのが評価の対象になります。私はこの「感情移入」出来れば名作という基準には反対です。登場人物に共感なんかできなくても映像美、プロットの素晴らしさ、描写の緻密さ、音楽など創作はいくらでも評価出来ると思うからです。そういう立場の私ですが「よりもい」では度々「私はこの感情について知っている」「かつて自分も体験したことがある」と感じてそれにより心が動かされることがありました。

 それはもはや「感情の移入」というより「記憶の再生」「デジャヴュ」という感覚に近い気がします。夜の新宿を走ったことも、嵐の甲板に出たことも、雲海から昇る朝日を友人と眺めたことも、ないのに「なんとなく知っている。」結月の友人を渇望する気持ちも、めぐっちゃんの妬みの気持ちも、報瀬のざけんなよも、その時の気持ちを「なぜか知っている。」その積み重ねがいつの間にか私たちも一緒に旅をして一緒に何かを成し遂げたような感覚にさせてくれます。だからこそ最終話の余韻はなによりも寂しく感じロスが大きくなるのではないでしょうか。


《よりもいの魅力③ 挿入歌の魔力》

 これは説明するまでもなく見てもらえれば誰もが納得してくれるだろうと思います。番組のちょうどいいところで、絶妙のタイミングで入る素晴らしい挿入歌の数々。そのどれもが印象深く記憶に刻まれているので歌を聴くだけでシーンが脳内で再生されます。ちなみに私は「ハルカトオク」派ではなく「宇宙を見上げて」派です。もちろんそれ以外も全て名曲ぞろいです。


これ以外にも書ききれないほど魅力に溢れた作品です。
特にキャラクターは本当に魅力的でそれぞれ語りたいことがたくさんあります。
なので今後7回くらいに分けて「よりもい」の魅力について語っていこうかなと思います。
次回以降の更新予定はこんな感じです。

(1)概論←本記事
(2)三宅日向論
(3)白石結月論
(4)小淵沢報瀬論
(5)玉木マリ論
(6)高橋めぐみ論
(7)轟伸恵論
(8)まとめ