1年経っても色褪せない不朽の名作「宇宙よりも遠い場所」を味わい尽くす今更よりもい論
第二回目からは各キャラクターに焦点を当てて書いていこうと思います。

今回紹介するキャラは「三宅日向」
キャラの画像等は公式サイトを見てください。
主人公キマリたちが通う高校の近くにあるコンビニでアルバイトをする少女。
学年的にはキマリ、報瀬と同じ。
2001年7月20日生まれ(かに座)身長145cm、血液型はAB型。好きなものは「変な置物、ダサTシャツ」というキャラクターです。
==========お品書き==========

1,名言キャラとしての日向

2,学校が世界の全てだったあの頃

3,真の名言キャラへの覚醒

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《三宅日向論1、名言キャラとしての日向》


 さて、よりもいの三宅日向と言われて皆さんはどんなシーンを思い出すでしょうか?
6話のパスポート紛失事件や11話の陸上部員との決別などのシーンが挙がると思いますが、それよりも様々な場面で彼女の口から出てくる「名言っぽい」セリフの方が印象に残っているという方もいるのではないでしょうか。

「引き返せるうちは旅ではない。引き返せなくなった時に初めてそれは旅となるのだ。」
「悪意に悪意で向き合うな。胸を張れ。」
など著名人が口にしていてもおかしくないような名フレーズを作品中幾度も生み出した彼女ですが、私個人としては日向は名言キャラではないと思っています。

名言蒐集家の私が思うに、名言とは大きく分けて①誰が言ったとしても十分説得力を持ちうる金言と②その人がいうことで格段に説得力の増す一言のふたつがあると思っています。

①の代表例はスラムダンク安西先生の「諦めたらそこで試合終了ですよ。」というセリフ。ジャンプ史に残る名言とはいえ、そこからは安西先生がどんな人生を歩んできたのか、どんな哲学を持っているのかをうかがい知ることはできません。正直毎回一回戦負けしている弱小校の監督も似たようなことは言えるし、一定の説得力を持たせることは出来ると思います。
②の代表例はリチャード・ニクソンの「人間は負けたら終わりなのではない。辞めたら終わりなのだ。」という言葉。60年の大統領選を歴史的僅差で敗北し、不遇の時代を過ごすも68年には見事大統領に選ばれたニクソンの言葉だと思えばより実感できる名言ではないでしょうか。(当のニクソンは大統領就任後ベトナム戦争からの撤退や金ドル交換停止などの「やめる」選択をとった人間だったり、ウォーターゲートで辞任に追い込まれたりしているのもポイント高いですね。)

 そういう意味では日向の言葉はどこか本人の人生からにじみ出てきたような説得力を感じないものが多い気がします。どちらかというとその場の雰囲気に最もあったそれっぽい言葉を発しているだけにも聞こえます。これは本人が17歳という若者で人生経験が足りていないからしょうがないことなのですが…

 5話の「悪意に悪意で向き合うな」や12話の「何もしないのも思いやり」などはむしろ本人がそうすることが望ましいと自分に必死に言い聞かせている言葉のように聞こえます。そうすることが正しいと感情よりも理性でわかってしまう聡明な人間ですから。

 そんな日向が作中で大きく成長を遂げ真の名言キャラへと昇華するシーンが実はあります。次項ではそれについて詳しく語りたいと思います。



《三宅日向論2、学校が世界の全てだったあの頃》

 三宅日向が一歩成長を遂げるのは言うまでもなく11話です。まぁ ざけんなよのシーンは報瀬の方が重要なシーンなのでここでは多くは語りませんが。11話で報瀬は「もうとっくに踏み出しているから」と言っていますが、日向は正直踏み出せていませんでしたよね。あの言葉によってようやく学校という狭い世界から外の大きな世界へ踏み出すことができたのではないかと思っています。

 子供(小~高校生)にとって「世界」とは「学校」のことです。教師、友人、先輩、後輩との関係がなによりも大切で、それが壊れてしまわないようにすることに全力を注いでいます。それでもなにかの拍子で壊れてしまったら、仲間から無視されたり、いじめを受けたり、教師が信用できなくなったりしたら、子供にとってそれはなによりも大きな絶望なのだと思います。

 私は幸い習い事のおかげで幼稚園から大学までずっとつるんでた友人が学校の外にたくさんいたので学校で軽い仲間はずれに会った時逃げ場を見つけることができました。学校だけが全てじゃないことをかなり早い時期に実感することができたのはよかったと今でも習い事に行かせてくれた親に感謝したりもします。

 でも大抵はそうではないですね。日向も学校の陸上部だけが世界の全てだった。だからそこを悪意でもって奪われたことに耐え続けることなんてできなかった。それで学校を辞めてフリーターになるわけですが、はたしてそれだけで彼女の世界は新しい広がりを見せたでしょうか?キマリがやってきて報瀬と知り合い南極を目指すことになってもおそらく彼女の心には学校が、陸上部が重く蓋をしていたのではないでしょうか。(出発直前にスパイクを見ていたことなどから推測)

 そんな閉じた狭い世界を性格の悪い南極厨の報瀬が無理やりこじ開けてくれたから、全員の見ている前で「もうとっくに踏み出している」と宣言してくれたから、日向は初めて外の世界へ飛び出すことができたのではないでしょうか。11話のクライマックスで初めて友情を理解し実感できたのは実は結月ではなく日向の方だったというのが私の解釈です。

そしてこれが日向を真の名言キャラへと押し上げることになったのは言うまでもありません。



《三宅日向論3、真の名言キャラへの覚醒》

 私が日向のセリフで一番の名言だと思っているのは、13話のラストシーン「どこまで行っても世界は広くて新しい何かは必ず見つかるから」というものです。
これは前述の名言の分類で言うなら②に当たるものです。なぜならいろんなことをわかったふうに名言っぽく語る頭のいい子が、世界の端っこまで行っておバカさんたちと交流したことによって手に入れたものがはっきりとにじみ出てきているからです。宇宙よりも遠い場所までいってようやく学校以外の世界と本物の友情を手にすることができた人間だから出てくる言葉です。だって11話では南極にきた理由を「何もないからだ」と語っていた日向が言ってるんですよ。

 だから私はこの一言がとても好きです。

そして私はまだよりもいを見ていない人にこういって薦めることができます
「三宅日向っていうキャラが名言メーカーだから発言に注目するといい」と。


以上、今更よりもい論(2)三宅日向論でした。
読んでいただいてありがとうございました。


以下更新予定です。

(1)概論
(2)三宅日向論←本記事
(3)白石結月論
(4)小淵沢報瀬論
(5)玉木マリ論
(6)高橋めぐみ論
(7)轟伸恵論
(8)まとめ